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田渕クリニック 田渕 正康 

 メタボリックシンドローム、通称メタボは各種メディアを通して年齢を問わず広く定着した感があります。メタボリックシンドロームは1999年にWHO(世界保健機構)が提唱した疾患概念です。わが国では2005年に健康診断基準(表)が示され、新しい取り組みとして今年の4月から40歳から74歳を対象として特定検診・特定保健指導が始まりました。
 社会環境の変化とともにわが国の疾病構造は大きく変化して脳卒中や虚血性心疾患などの動脈硬化症を基盤とした疾患が増加してきました。動脈硬化を促進する危険因子としての高血圧、糖尿病、脂質異常症など(生活習慣病)は単独よりも重複して存在すると脳卒中や虚血性心疾患の発症を増大させることもよく知られた事実です。
 では今なぜメタボリックシンドロームという疾患概念が注目されてきたのでしょうか。最近の肥満|脂肪細胞の研究成果により高血圧、糖尿病、脂質異常症などは共通した病態から生じているということがわかってきました。共通した病態とは内臓脂肪蓄積型肥満によるインスリン抵抗性です。インスリン抵抗性とは膵臓から分泌されるインスリンの効果の低下を意味します。このインスリン抵抗性によって糖尿病、脂質異常症、高血圧などが引き起こされることがわかったのです。少しややこしくなりましたが、要するに動脈硬化の発症と進展には内臓脂肪蓄積型肥満がその始まりで、潜行持続することが糖尿病、脂質異常症、高血圧などの原因になるという学説です。川に例えれば、上流(青春期)に過食や運動不足などの生活習慣の乱れがあると中流(青年期)に至って内臓脂肪蓄積型肥満に陥り、下流(壮年期)になると高血圧、糖尿病、脂質異常症の発症と進展による動脈硬化が完成し、その結果、河口(老年期)になって脳卒中や虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)を発症するという流れとなります。
 メタボリックシンドロームは多様な生活習慣病の病態をインスリン抵抗性として一元的に理解できること、生活習慣の改善による内臓脂肪の蓄積を防ぐことが動脈硬化の予防にいかに重要であるかを発信しています。個人個人が内臓脂肪蓄積の危険性を自ら理解して自発的に行動し生活習慣の改善に結びつける努力によって動脈硬化を基盤とした血管病(脳梗塞、脳出血、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症、大動脈瘤)の発症の予防に結びつくこととなります。
 今回は脳梗塞の予定でしたが、脳梗塞発症の前段階として重要なメタボリックシンドロームを取り上げました。